急性中耳炎

耳の痛み、耳だれ(お子さんであれば、よく耳をさわる)、発熱

子どもの感染症のなかで最も多いものの一つです。子どもは、耳管(鼻と耳をつなぐ管)が未発達なため、風邪などが起因して中耳炎の症状があらわれることが多いです。治療は、内服薬と点耳薬が中心になります。急性中耳炎は慢性中耳炎や滲出性中耳炎（しんしゅつせいちゅうじえん）を引き起こし、難聴の原因となることもあるため、しっかりと治療することが大切です。

滲出性中耳炎（しんしゅつせいちゅうじえん）

耳の聞こえが悪い、耳がふさがった感じがする、耳鳴りがする、
呼んでも返事をしない、聞き返しや聞き間違いが多い、テレビの音が大きい、
近づいて見る、よく耳をさわる

子どもや年齢を重ねた方に多く見られる、鼓膜の奥の中耳に滲出液という水がたまる病気です。“鼻すすり”も原因になるため、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎に対する薬物 (内服薬や点鼻薬) 治療も一緒に行っていきます。薬物治療のほかには、鼻から空気を送り込んで、耳管(耳と鼻をつなぐ管)の通りをよくする治療を行います。治りが悪い場合は、“鼓膜チューブ”を入れる手術を行うこともあります。滲出性中耳炎（しんしゅつせいちゅうじえん）は治るまでに時間がかかり、再発しやすい病気です。病状がすぐに改善されない場合でも、医師の指示を守り、治るまでしっかりと根気よく治療を続けることが大切です。

老人性難聴・騒音性難聴

高い音が聞こえない、言葉が聞きとりにくい、テレビの音が大きい
騒音下で仕事をしている、ヘッドフォンで音楽を聴く習慣がある

老人性難聴は高い音が聞こえにくい、騒音性難聴は決まった高さの音(4000Hz)が聞こえにくいという特徴があります。騒音性難聴は、大きな音が聞こえる場所で仕事をされる方や、ヘッドフォンやイヤホンをして音楽などを聴く習慣のある方に起こる難聴です。聴力検査を行い、聞こえの状態を調べます。検査の結果によっては、補聴器の適応となる場合(補聴器の項目もご覧ください)もあります。

突発性難聴

片方の耳が突然聞こえなくなった、片方の耳がつまっている感じがする

ストレスや睡眠不足が引き金となり、発症することが多い病気です。聴力検査を行い、左右差の有無・程度にあわせて内服治療を行っていきます。その後、定期的に聴力検査を行い(聞こえの左右差が大きい場合は、病院に紹介する場合もあります)、薬の効果や副作用をみながら、内服薬の調整を行います。また、日常生活で気をつけることについてもお話していきます。

メニエール病、良性発作性頭位めまい症

めまいがする(ぐるぐる回る、ふらふらする)、耳の聞こえにくさを伴うめまいがある

耳鼻咽喉科領域のめまいは、耳“内耳”という部分の障がいで起こります。メニエール病は難聴を伴うめまいが起き、繰り返すことが特徴です。良性発作性頭位めまい症は耳石が原因となり、朝起きた時や“ある特定の方向”に顔を向けた際にめまいが起きます。診察時にどのようなめまい(どういうことをするとめまいが起き、どのくらい続くのか等)なのか詳しくお伺いしますので、受診前にご自分の症状をまとめていていただけるとスムーズに診察を行えます。聴力検査や重心動揺計(ふらつきの検査）、眼振(眼球の運動に異常がないかを調べる)検査等を行い、めまいの原因を調べます。眼振検査は、めまいの原因が耳の異常によるものか調べるために行います。検査を行うと一時的にめまいがひどくなってしまうことがありますので、めまいで受診され場合は、“ご自分で運転して来院する”ことは控えてください。

アレルギー性鼻炎

さらさらとした透明な鼻水、鼻づまり、くしゃみ

アレルギー性鼻炎とは、鼻の粘膜に入った異物を排除しようとする反応が過剰に起こることで、花粉やハウスダスト等が原因で起こることが多いです。
アレルギー性鼻炎の治療は、内服薬と点鼻薬が中心になります。お薬は、患者さんがお困りになっている症状やその強さに合わせて使っていきます。内服薬にはいろいろな種類があるため、お一人お一人それぞれの方に合うお薬を使っていただきたいと思っています。初めて受診される方には、どのようなお薬を希望されるか確認し調整していきますので、診察時にご相談ください。また、スギ花粉症の方には初期治療をおすすめしています。初期治療とは花粉飛散の2週間程前から内服治療を行うことで、花粉飛散時期に症状が悪化することを回避する治療になります。
あわせて、アレルギーの原因検索や、スギ及びダニ・ハウスダストが原因のアレルギーがある方は “アレルゲン免疫療法（舌下免疫療法）”やっておりますのでご相談ください。
アレルギー性鼻炎は、他の病気(急性中耳炎や滲出性中耳炎、副鼻腔炎など)の引き金となることがありますので、症状がひどくならないように早めに治療していくことが重要になります。

副鼻腔炎

鼻づまりがなかなか治らない、粘り気のある黄色～緑色の鼻水が出る、
鼻水がのどに落ちる、においがわかりにくい、咳や痰が出る、
頭痛・頭が重い、目の奥のあたりが痛い、頬のあたりが痛い

副鼻腔炎とは、鼻や鼻の周囲にある空洞(副鼻腔)の中の粘膜に炎症が起こし腫れた状態になることで、風邪(ウイルスや細菌感染)やアレルギーなどがきっかけで起こることが多い病気です。歯の治療でレントゲンやCTを行った際に、指摘されることもあります。
副鼻腔炎の治療としては、抗生物質の内服が中心になります。抗生物質は、風邪などとは違い、数週間～2、3カ月にわたり内服する必要がありますので、根気よく治療を続けましょう。炎症が続くと、“鼻茸”と呼ばれるできものができてしまうこともありますので、注意が必要です。

鼻茸（はなたけ）(鼻ポリープ)

鼻づまりがなかなか治らない、においがわかりにくい等

慢性副鼻腔炎の方に見られることが多いです。鼻や副鼻腔の粘膜が炎症によって腫れて垂れ下がり、キノコ状になったものです。炎症が続くことで大きくなりますので、注意が必要です。内服薬や点鼻薬で治療を行いますが、鼻茸が大きい場合は手術が必要になる場合もあります。

扁桃炎（へんとうえん）・咽頭炎（いんとうえん）・喉頭炎（こうとうえん）

のどの痛み、発熱(高熱)、飲み込むときに痛みがある、声のかすれ、
声が出しにくい、咳が続く、痰が出る

扁桃炎・咽頭炎・喉頭炎とは、細菌やウイルスの感染が扁桃・咽頭・喉頭という場所に起き、炎症が起きている状態のことです。通常は“かぜ”の症状として起こります。のどの痛みが症状の中心になりますが、高熱や倦怠感があらわれることもあります。のどの痛みが悪化すると、飲み込むときの痛みや、痛くて食べられなくなってしまいます。扁桃炎は悪化すると、扁桃の周りまで炎症が広がる“扁桃周囲炎”や扁桃の外側に膿がたまる“扁桃周囲膿瘍”を引き起こし、喉頭炎は腫れがひどくなると、息苦しさや窒息する危険性が出てくるため、注意が必要です。
いずれの場合も、抗生剤を含む内服薬等で治療を行っていきますが、腫れや症状がひどい場合は、総合病院への紹介を検討する場合もあります。

声帯ポリープ

声がれ、のどや発声時の違和感、声がやや低音になる

声帯ポリープとは、声帯にできる炎症性の“こぶ”のことです。声帯がふるえる場所に声帯ポリープができることで、声がうまく出なくなります。声帯ポリープは、教師や歌手、インストラクターなど、声をよく使う方に見られることが多いです。ファイバースコープでのどの状況を確認し、内服薬を処方します。炎症が生じている時に声を出すと、炎症を悪化させることがありますので、必要時以外は声を出すことを控えていただきます。また、内科的治療で効果がない場合は、手術をおすすめすることもあります。

(高齢者の方で)ものが飲み込みにくい・声のかすれがある方

年を重ねると、体の外側の筋肉だけでなく体の内側の筋肉も徐々に衰えてきます。

耳鼻咽喉科の分野では、
のどの飲み込みに関係する筋肉の衰え ➡ 嚥下困難(物が飲み込みにくい)
声帯の筋肉の衰え ➡ 声の出しにくさ、声がかすれる
という症状が起こります。
これらの症状は、進行すると低栄養や脱水、窒息、肺炎などを引き起こすことがあります。特に、肺炎が起こる原因の約70％は誤嚥性肺炎といわれていますので、注意が必要です。
ファイバースコープでのどの状態を診察した後、筋肉が衰えている部分の運動の仕方や飲食時の注意事項等をお話していきます。すぐに改善するものではないですが、のどの筋力が改善していけるよう手助けしてきます。

舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)

～スギ花粉症・通年性アレルギー性鼻炎にお悩みの方へ～

スギ花粉症は、スギ花粉が原因(アレルゲン)となっておこるアレルギーの疾患です。通年性アレルギー性鼻炎は、ダニ、真菌(カビ)、昆虫、ペットの毛などが原因となり、季節に関係なく症状があらわれるアレルギーの疾患です。
どちらも、主にくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどのつらいアレルギー症状を伴い、その症状によって日常生活のさまざまな場面で影響を及ぼすことがわかっています。

舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)とは

舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)は、原因となるアレルゲンを用いて行う治療法のため、治療開始前に、原因となるアレルゲンを確定する確定診断(採血またはイムノキャップラピッドによる検査)を行う必要があります（確定診断およびスギ花粉症とダニアレルゲンによる通年性アレルギー性鼻炎による舌下免疫療法は、保険適応となっています）。
舌下免疫療法は、長期間(3～5年)かかる治療になりますが、正しく治療が行われると、スギ花粉症の舌下免疫療法では、治療開始後の初めてのスギ花粉飛散シーズンから、通年性アレルギー性鼻炎の舌下免疫療法では、治療を開始して数カ月後から効果が期待されます。また、年単位で継続することで最大の効果が得られると考えられます。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)

～いびきが気になる方へ～

大きなイビキをかく、日中いつも眠い、居眠り運転をよく起こしそうになる、夜間呼吸が停止する、夜中に何度も目が覚める、起床時に頭痛やだるさがあるという症状がある方は、睡眠時無呼吸症候群かもしれません。

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある場合、パルスリープ ( 睡眠評価装置 ) という機械で、連続した２日間の睡眠状態を調べます。パルスリープ検査では、鼻口呼吸状態、脈拍数、SPO₂(経皮的動脈血酸素飽和度)、いびき、体の動き、マスク圧がわかります。この検査結果とファイバースコープでの“のどの状態確認”を総合的に判断し、患者さんと相談したうえで、マウスピース療法や経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)などのなかで、どの治療方法がよいのかを決めていきます。

睡眠時無呼吸症候群は、治療法が確立されており、適切に検査・治療を行えば決して怖い病気ではありませんが、様々な合併症を高率に引き起こす病気ですので、気になる方は早めにご相談下さい。

補聴器のご購入

～耳の聞こえが気になる方へ～

周りからテレビの音が大きいといわれる、会話を聞き返すことが多い、呼ばれても聞こえないことがある等の症状がある方は、補聴器の購入を検討する必要があるかもしれません。年齢を重ねると、ほぼすべての方の耳が遠くなってきますが、周波数の高い音から聞こえにくくなっていくという特徴があります。また、ご本人は気がつかず、他人に指摘され受診される方も多いです。耳の聞こえは、認知症の発症や悪化に関係があるといわれています。

聞こえが悪いということで受診された場合、聞こえの検査を行い、どのくらいの大きさの音が聞こえているのか調べます。その後、言葉の聞きとりの検査を行い、 “あ” “さ” などの言葉がどのくらいの大きさで聞きとれるかを調べます。